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働き方

介護職の残業は実際どれくらい?——週1.7時間・半数は「残業なし」の裏側

「介護って、サービス残業まみれなんじゃ?」——転職の相談で、体力面と並んでよく出てくる不安です。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、この不安にはまず全体の数字を見てから、自分に当てはめる順番でお答えしています。残業は「多い・少ない」の印象で語られがちですが、実は立場によって大きく変わるもの。平均だけ見て安心も心配もしないのが、正しい読み方です。

先に結論介護労働者の1週間の平均残業時間は1.7時間「残業なし」が56.6%と半数を超えます。ただしこれは全体の平均。職位で分けると、一般職・担当職は1.1時間なのに対し、主任・リーダー級は2.3時間、管理職は2.9時間と、上に行くほど増えます。残業の量は「どの職場か」だけでなく「どの立場か」でも決まる——ここを分けて見るのがコツです。

「介護は残業が多い」は、平均で見ると逆

まず、いちばん広まっている不安を数字で確かめます。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると、介護労働者の1週間の平均残業時間は1.7時間。しかも「残業なし」と答えた人が56.6%と、半数以上はそもそも残業していません。シフト制で時間が区切られている職場が多いことも背景にあります。少なくとも「介護=どこも長時間のサービス残業」という一般化は、平均値の前では成り立ちにくい。

とはいえ、これを「介護は楽」と読み替えるのも早すぎます。同じ調査で、労働者が抱える悩み・不安・不満の1位は「人手が足りない」(49.1%)。残業時間が短いことと、人手不足を感じていることは、両立します。残業を出さない代わりに、決められた時間の中で仕事の密度が上がっている——そういう現場の実感が、この2つの数字のあいだにあると、わたしは読んでいます。

数字で見る——「誰の残業か」で景色が変わる

まず全体の分布を押さえます。残業なしが過半数で、あっても週5時間未満に大きく偏っています。

1週間の残業時間の分布は、「残業なし」56.6%、「5時間未満」25.4%。この2つで8割を超えます。「10時間以上」は合わせて4.3%にとどまります。
平均1.7時間という数字は、大多数が残業ゼロ〜わずか、一部に長い人がいるという形をならした結果です。
出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査)」図表4-2-1

そのうえで、いちばん見てほしいのが職位別の差です。同じ介護の職場でも、立場でこれだけ違います。

職位(1週間の残業時間)平均残業時間
管理職2.9時間
主任・(サブ)リーダーなど職場のまとめ役2.3時間
一般職・担当職1.1時間

※介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査)」図表4-2-1より。1週間の平均残業時間。

一般職の1.1時間に対し、管理職は2.9時間。役職が上がると残業も倍以上になるのが読み取れます。これは介護に限らない話ですが、求人選びでは大事な視点になります。いま応募する一般職としての残業と、数年後にリーダーを任されたときの残業は別物。「今の負担」と「昇進後の負担」を分けて考えると、長く働くイメージがぶれません。

執筆者ノエル
💡 ノエルの着眼点|求人票の「残業ほぼなし」は“誰の”残業かを確かめる
残業が立場で変わるとわかると、求人票の一言の読み方が変わります。

求人票の「残業ほぼなし」は、多くの場合一般職として入ったときの話です。データでも一般職は週1.1時間と少ない。ただ、そこで長く働けば、いずれ主任やリーダーの声がかかります。そのときに残業が2倍になり、しかも役職手当が残業の増分に見合っているか——ここまで見て、はじめて「働きやすさ」の全体像がわかります。だからわたしは面接で、「リーダーや主任の方は、実際どのくらい残業されていますか」と、一段上の立場の実態を聞くようすすめています。今の自分の残業だけでなく、続けた先の景色を確かめておく。介護は長く働ける仕事だからこそ、入口の条件と数年後の条件をセットで見るのが得だと思います。

残業と並んで負担のイメージが強いのが夜勤です。夜勤専従の回数や手当の相場は介護の夜勤専従の実際の記事で、悩み1位の「人手が足りない」の構造は介護の人手不足の記事で掘り下げています。働き方そのものの選び方は介護の働き方の違いの記事もあわせてどうぞ。

ただし、統計に出ない残業もある

数字を鵜呑みにしないために、ここは正直に線を引きます。

ここは正直に。平均1.7時間という数字は、あくまで回答された残業時間です。記録に残らないサービス残業や、始業前の申し送り・準備の時間は、こうした統計に表れにくいという限界があります。残業が少ないこと自体は良い傾向ですが、「短い=負担が軽い」とまでは言い切れない。悩みの1位が人手不足であることも忘れずに。求人票の残業時間や、面接で聞いた数字は、実際の勤務時間の“下限の目安”くらいに受け止め、見学で職員の動きや申し送りの様子を自分の目で確かめるのが確実です。数字は入口、確認は現場——この二段構えでいきましょう。

最後に

介護職の残業は、1週間の平均で1.7時間、半数以上は残業なし。「サービス残業まみれ」という一般化は、少なくとも平均や一般職の実態とはずれています。ただし残業は立場で増え、管理職は一般職の倍以上。いまの残業と、続けた先の残業を分けて見ることが、長く働くイメージを持つコツです。求人票の「残業ほぼなし」は、誰のどの立場の話かまで確かめて、はじめて意味がわかります。

参考データ(出典)
・公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査結果報告書)」(令和7年7月公表)——1週間の平均残業時間1.7時間、「残業なし」56.6%・「5時間未満」25.4%、職位別平均残業時間(管理職2.9時間/主任・(サブ)リーダーなど2.3時間/一般職・担当職1.1時間、図表4-2-1)、労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等のうち「人手が足りない」49.1%。
※本文中の数値は上記調査に基づく回答者の申告に基づく概況です。記録外の労働時間は統計に反映されにくく、実際の負担は事業所・職種・立場により異なります。最新の詳細は各公式資料をご確認ください。