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転職・職場選び

介護職の定着にいちばん効く施策は?——「賃金」より上だった“休みの取りやすさ”

「働きやすい職場を選びたい」——だれもがそう思うのに、いざ求人票を前にすると、何を見れば働きやすさが分かるのか迷います。そこで使えるのが、雇う側のデータです。事業所が「実際に人の定着に効いた」と感じた施策がわかれば、それを求職者は逆引きして「その施策があるか」を確かめればいい。わたしは転職サポートの仕事で、この“逆引き”をよくおすすめしています。

先に結論介護事業所が「職場定着に効果があった」と答えた方策の1位は、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」34.4%「賃金水準の向上」30.9%を上回りました。一方、採用(人を集める段階)でいちばん効いたのは賃金(36.0%)。お金は“入口”に効き、休みの取りやすさは“定着”に効く——雇う側の実感は、入口と出口できれいに分かれています。

「給料さえ上げれば定着する」は、当たっていない

まず、経営でも求職でもよくある思い込みをほどきます。「結局お金でしょう、給料を上げれば辞めない」——これは採用の話としては正しく、定着の話としては1位ではありません。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」で、事業所が効果を感じた施策を「採用」と「定着」に分けて見ると、賃金水準の向上は採用で1位(36.0%)ですが、定着では2位(30.9%)。定着の1位は、休暇や勤務日時の柔軟さ(34.4%)でした。

この差は、働く人の実感ともつながっていると思います。給料は入るきっかけにはなるけれど、毎日続けられるかどうかを決めるのは、「休みたいときに休めるか」「シフトの都合が利くか」のほう。生活と仕事が両立できる感覚が、辞めない理由になる。数字は、その現場感覚を裏づけています。

数字で見る——定着に効いた施策ランキング

事業所が「職場定着に効果があった」とした方策を、割合の高い順に並べます。いずれも、その方策を行っている事業所のうち効果を感じた割合です。

職場定着に効果があった方策割合
有給等の休暇取得・勤務日時を変更しやすい職場づくり34.4%
賃金水準の向上30.9%
人間関係が良好な職場づくり29.5%
本人の希望や人間関係に配慮した配置・異動23.6%
仕事と育児や介護の両立支援20.2%

※介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査)」図表2-3-1より。各方策を行っている事業所に占める「効果があった」割合。複数回答。

上位を見ると、休みの柔軟さ・賃金・人間関係の3つが3割前後で並びます。前の2つ(休暇と賃金)は求人票や面接で確かめやすく、3つ目の人間関係は、介護の離職理由でも1位でした。定着に効く要素と、辞める理由は同じコインの裏表だとわかります。辞める理由をつぶす施策が、そのまま定着に効く——当たり前のようで、求人選びの軸として意外と見落とされがちなポイントです。

採用(人を集める段階)で効果があったとされた方策は、「賃金水準の向上」36.0%が1位。次いで「有給等の休暇取得・勤務日時の柔軟さ」25.7%、「託児所設置や保育費用支援」20.2%と続きます。
賃金は“来てもらう”のに効き、休みの柔軟さは“居続けてもらう”のに効く——同じ職場づくりでも、効く場面が違います。
出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査)」図表2-3-1
執筆者ノエル
💡 ノエルの着眼点|「有給は取れますか」ではなく「消化率」を聞く
定着の1位が休みの柔軟さなら、面接ではそこを一段深く確かめます。

「有給は取れますか」と聞くと、まず「取れます」と返ってきます。制度としては当然あるので、この質問では差がつきません。わたしが求職者にすすめているのは、「直近で、有給はどのくらい消化されていますか」「希望休は月に何日まで出せますか」と、運用の実績で聞くこと。すらすら答えられる職場は、休みを取る文化が回っている証拠です。逆に「人による」「繁忙期は難しい」で濁されたら、制度はあっても使いにくい可能性がある。定着に効くのは“制度の有無”ではなく“使える運用”のほうなので、そこを確かめない手はありません。求人票で「有給消化率」まで書いてある事業所は、それだけで一歩リードしていると見ていいです。

ランキング2位の賃金については、毎月の給料に上乗せされる公的なお金の仕組みを処遇改善加算の記事で、3位の人間関係については、辞めた人の理由の中身を介護職の離職理由の記事で、それぞれ数字から掘り下げています。定着の3要素をセットで確かめたい人はあわせてどうぞ。

ただし、施策が「ある」ことと「効いている」ことは別

ランキングは便利ですが、読み方を一つ間違えると空回りします。ここは正直に。

ここは正直に。この調査で「効果があった」とした割合は、いちばん高い項目でも3割台。同じ施策をやっていても、効果を実感できていない事業所のほうがむしろ多いということです。休暇制度や研修制度が「ある」だけでは定着に直結しない。効くかどうかは、それが日常的に使える運用になっているかで決まります。だから求人票の「福利厚生充実」「研修制度あり」という言葉は、あることの確認ではなく、使えているかを面接で確かめる入口として扱ってください。制度名を数えるより、その制度が実際に回っている気配を読むほうが、ずっと当たります。

最後に

介護の定着にいちばん効いた施策は、賃金ではなく「休みと勤務日時の柔軟さ」(34.4%)でした。お金は入口に、休みの取りやすさは長く続けるほうに効く。求人票を見るときは、給料の額と同じ熱量で、休みが実際に取れているか、シフトの都合が利くかを確かめてみてください。雇う側が効果を実感した順番は、そのまま「働きやすい職場を見分けるチェックリスト」になります。

参考データ(出典)
・公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査結果報告書)」(令和7年7月公表)——採用や職場定着・離職防止の方策のうち「職場定着に効果があった」割合(「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」34.4%/「賃金水準の向上」30.9%/「人間関係が良好な職場づくり」29.5%/「本人の希望や人間関係などに配慮した配置・異動」23.6%/「仕事と育児や介護の両立支援」20.2%)、「採用に効果があった」割合(「賃金水準の向上」36.0%/「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」25.7% ほか、図表2-3-1)。各割合はその方策を行っている事業所に占める効果があったとする割合、複数回答。
※本文中の数値は上記調査に基づく概況です。効果の実感は事業所により異なります。最新の詳細は各公式資料をご確認ください。