介護職の離職理由、1位は「人間関係」——その中身は“上司との関係”だった
「なぜ介護は人が辞めるのか」を知りたい人には、たぶん2種類います。業界の課題として眺めたい人と、自分が次の職場で同じ思いをしたくない人。この記事は後者のために書きます。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、辞めた理由の統計は「業界の弱点リスト」ではなく「次の職場を見るチェックリスト」として読むよう、いつもお伝えしています。
「給料が安いから辞める」は、1位ではない
よくある思い込みから片付けます。「介護は給料が安いから辞めるんでしょう」——半分は当たっていますが、離職理由の順位で言えば1位ではありません。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」で、直前の仕事が介護関係だった人の離職理由を見ると、トップは人間関係(24.7%)。「収入が少なかったため」も上位(16.3%)に入りますが、人間関係のほうがはっきり高い。お金で辞める前に、人で辞めている——これが数字の示す順番です。
この事実は、求職者にとってむしろ朗報だと思っています。給料は求人票の金額である程度わかりますが、人間関係は入ってみないとわからない、と思われがち。でも辞める理由の中身まで見れば、「何を確かめれば人間関係の地雷を避けられるか」が具体的に分かるからです。次の章で、その中身を開けます。
数字で見る——「人間関係」の正体は上司との関係
まず、直前が介護の仕事だった人の離職理由の上位を並べます。
| 直前が介護の仕事だった人の離職理由(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 職場の人間関係に問題があったため | 24.7% |
| 他に良い仕事・職場があったため | 18.5% |
| 勤務先の事業理念や運営のあり方に不満 | 17.6% |
| 収入が少なかったため | 16.3% |
※介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査)」図表3-2-1より。直前の仕事が介護関係の回答者が対象。
ここで止めずに、1位の「人間関係」だけをもう一段ズームします。人間関係が理由と答えた人に、その具体的な中身を聞いた結果がこちらです。
同僚どうしのトラブルより、上司・先輩との縦の関係が中心だとわかります。
出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査)」図表3-2-2
「人間関係が悪い」と聞くと、なんとなく職場全体の空気を想像します。でも数字が指しているのは、もっと具体的な場所——指導する側とされる側の関係です。上位3つはどれも上司・先輩がらみ。だとすれば、面接や見学で確かめるべき相手も絞れます。「職場の雰囲気」という漠然としたものではなく、自分を指導する立場の人が、どんな関わり方をするか。ここが介護の定着を左右する急所だと、わたしは読んでいます。
「人で辞めた」経験があると、次は辞め方でも悩みがちです。退職の切り出し方や法律上の枠組みは介護職を辞めたいときにまず知っておくことの記事で、面接全体の準備は介護の面接でよく聞かれる質問の記事で整理しています。あわせて読むと、辞める・選ぶの両側から準備できます。
ただし、人間関係は「相性」の面もある
数字を一方向に読むと、これも足をすくわれます。ここは中立に置きます。
最後に
介護職の離職理由の1位は人間関係(24.7%)で、その中身は約半数が上司・先輩との関係でした。この数字は、あなたを不安にさせるためのものではありません。次の職場で何を見ればいいかを、具体的に教えてくれる地図です。給料は求人票で、人間関係は「誰が指導するか」の一問で確かめる。辞めた人の理由をチェックリストに変えられた人は、同じ理由で辞めずにすむ確率がぐっと上がります。
・公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査結果報告書)」(令和7年7月公表)——直前の仕事が介護関係の場合の離職理由(「職場の人間関係に問題があったため」24.7%/「他に良い仕事・職場があったため」18.5%/「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」17.6%/「収入が少なかったため」16.3%、図表3-2-1)、「職場の人間関係に問題があった」とした者の具体的内容(「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」49.1%/「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」36.2%、図表3-2-2)。
※本文中の数値は上記調査に基づく概況です。離職理由は複数回答であり、割合は回答者の状況により異なります。最新の詳細は各公式資料をご確認ください。
辞めた理由の半分が上司・先輩との関係なら、確かめるべきは「入職後、最初に誰が自分を教えてくれるのか」です。わたしが求職者にすすめているのは、面接でこう聞くこと——「未経験なのですが、入職後はどなたがどのくらいの期間、指導してくださいますか」。育成の体制がある職場は、教育担当や同行期間を具体的に答えられます。逆に「みんなで見ますよ」「そのうち慣れます」で流れる場合は、指導が個人まかせ=相性次第でパワハラ寄りにもなりうると一段警戒します。可能なら見学で、リーダー格の人が部下にどんな口調で話しているかを見る。指示の言葉づかいひとつに、その職場の縦の関係が出ます。求人票の給料より、この観察のほうが離職の予防にはよほど効きます。