介護は正社員?非正規?——「雇用の安定」を分けるのは無期か有期かという話
「介護で働くなら、やっぱり正社員がいいのかな。契約社員やパートだと不安定?」——就業形態で迷う人に向けて、短く整理します。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、この相談では毎回、「正社員か非正規か」より先に見てほしいところがあるとお伝えしています。求人票の“雇用形態”の欄には、安定を左右するもっと大事な情報が別に書かれているからです。
「正社員=安定、パート=不安定」は、分け方が雑
まずほどいておきたい思い込みがあります。「正社員だから無期で安定、パートだから有期で不安定」——これは単純化しすぎです。実は世の中には2つの別々のものさしが混ざっています。ひとつは正規/非正規(フルタイムか短時間か、賞与や手当などの待遇区分)。もうひとつは無期/有期(契約期間の定めがあるか)。パートでも契約期間の定めのない無期はありますし、フルタイムでも契約期間が区切られた有期(契約社員)もある。「働く時間の長さ・待遇」と「契約の安定度」は、本来べつの話なんです。
雇用の“切れにくさ”という意味での安定に効くのは、後者の無期/有期のほう。ここを押さえると、求人票の見え方が変わります。
介護は「無期雇用が多数派」の業界
では介護はどうなっているか。データを見ると、施設でも訪問でも無期雇用が6割以上を占めます。慢性的に人手が足りず、長く働いてほしい業界だけあって、雇用期間の定めのない働き方が主流になっています。
・介護職員(施設等):無期69.2%/有期23.7%
・訪問介護員:無期62.0%/有期30.3%
出典:令和5年度 介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)の結果を厚生労働省社会・援護局が集計/社会保障審議会 福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料(2025年5月9日)。無期・有期が不明の回答を含むため、合計は100%にならない。
この数字を翻訳すると、介護は「まず有期で入っても、無期に落ち着いていきやすい」業界だと読めます。人手が足りない現場ほど、雇った人を手放したくない。だから、はじめは契約社員やパートでも、続けるうちに無期・正規への道が開くケースは珍しくありません。訪問のほうが有期の割合がやや高めですが、これは短時間で働く登録ヘルパーが多い事情も背景にあります。
有期でも「5年ルール」で無期に変えられる
制度の後ろ盾も知っておくと安心です。労働契約法の「無期転換ルール」により、有期契約が通算5年を超えて更新された場合、働く人が申し込めば無期契約に転換できます(本人が申し込まないと自動では変わりません)。長く働き続けられる業界という介護の性質と、この5年ルールは相性がいい。「有期スタート=ずっと不安定」ではない、と制度の面からも言えます。
最後に
介護は無期雇用が多数派で、有期で入っても無期に落ち着いていきやすい——長く働くための土台のある業界です。就業形態を選ぶときは、「正社員か非正規か」という呼び名の安心感ではなく、雇用期間の定めと、無期・正規への登用の道があるかという中身を、求人票と面接で確かめてください。名前ではなく中身で選ぶ、が失敗を防ぐ物差しです。派遣・パート・正社員といった働き方そのものの違いや、求人票のどこを見るかもあわせて押さえておくと、判断がぶれません。
・令和5年度 介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)の結果を厚生労働省社会・援護局が集計/社会保障審議会 福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料(2025年5月9日)——就業形態別の割合:介護職員(施設等)無期雇用69.2%・有期雇用23.7%、訪問介護員 無期雇用62.0%・有期雇用30.3%(無期・有期不明の回答を含むため合計は100%にならない)。
・無期転換ルール=労働契約法第18条:有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約へ転換できる。
・求人票における雇用期間の定めの明示=職業安定法(求人等に関する情報の的確な表示)/労働基準法(労働条件の明示)にもとづく。
※数値は調査時点により変動し、就業形態の運用は事業所により異なります。制度の詳細は各公式資料をご確認ください。
「正社員」「契約社員」「パート」という呼び名は、事業所によって中身がまちまちです。だからわたしは、名前より「雇用期間の定め:なし/あり(ありなら更新の有無・上限)」の欄を先に見るよう勧めています。ここは求人情報の的確な表示ルール(職業安定法・労働基準法にもとづく労働条件の明示)で必ず記載される部分。もし面接まで進むなら、有期の求人では「無期や正規への登用実績はありますか」と一言聞いてください。採用する側の目線でいうと、人を大事にする事業所ほど、早めに登用の道を具体的に示します。言葉を濁す場合は、その職場での“その先”が描きにくいサインのことがある。呼び名の安心感ではなく、契約の中身と登用の道で判断するのが、遠回りに見えて確実です。