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データで見る介護

施設で働くか、訪問で働くか——同じ介護でも違う2つの仕事をデータで比べる

「介護の仕事」とひとくくりにされがちですが、施設で働くか、訪問で働くかで、日々の中身はかなり変わります。これから介護を始める人・別の形態に移ろうか迷っている人に向けて、求人の出やすさや働き手の顔ぶれといった“数字で見える違い”から整理します。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、この2つを混同したまま選ぶと後で「思っていたのと違う」が起きやすい、と感じています。

先に結論訪問介護(ホームヘルパー)は有効求人倍率が令和5年度で14.14倍と全職業平均を大きく上回り、採用されやすい仕事です。ただし「入りやすい=楽」ではありません。訪問は原則として資格が必要で、利用者宅に一人で入り、働き手の高齢化も進んでいます。一方、施設はチームで動き、無資格・未経験から入りやすい。求人倍率の高さは「採用されやすさ」であって「働きやすさ」ではない——ここを分けて見るのが選び方の起点です。

「倍率が高い=人気で入りにくい」は逆

まず、よくある誤解をほどきます。求人倍率が高いと聞くと「人気で競争が激しい」と受け取りがちですが、意味は逆です。有効求人倍率は「求職者1人あたり何件の求人があるか」。数字が大きいほど求人のほうが余っている=採用されやすい、つまり求職者に有利な状態を指します。訪問介護はこの倍率が突出して高い。裏を返せば、それだけ人手が足りていないということでもあります。

訪問介護に従事するホームヘルパーの有効求人倍率は令和5年度で14.14倍(前年度の令和4年度は15.53倍)。全職業の平均が1倍台であることをふまえると、突出した高さです。
出典:厚生労働省「職業安定業務統計」(社会保障審議会 介護給付費分科会 提出資料・2024年9月公表)

介護関係の職種は全体でも全職業平均のおよそ3〜4倍という高い倍率が続いていますが、その中でも訪問(ホームヘルパー)は群を抜きます。施設で働く介護職員の倍率は、ここまでは高くありません。同じ介護でも、「採用のされやすさ」は訪問のほうが大きい——これが1つ目の違いです。ただし採用ハードルの低さは、次に見る“働く中身”とセットで受け止める必要があります。

働き手の顔ぶれも、施設と訪問で違う

誰が働いているか、というデータにも差が出ます。就業形態(契約の安定度)、年齢、勤続年数を並べると、訪問介護のほうが年齢層が高く、有期雇用の割合がやや多い傾向が見えます。

介護職員(施設等)訪問介護員
無期雇用の割合69.2%62.0%
有期雇用の割合23.7%30.3%
60歳以上の割合約16.6%約25.7%
平均勤続年数7.9年7.5年

出典:令和5年度 介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)の結果を厚生労働省社会・援護局が集計/社会保障審議会 福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料(2025年5月9日)。無期・有期は不明回答を含むため合計は100%にならない。

翻訳すると、訪問介護は60歳以上が4人に1人で、施設よりも一段年齢層が高い。子育てが一段落した世代や、定年後に経験を活かして働く人に支えられている面があります。裏を返せば、担い手の若い補充が追いついていないとも読めます。訪問の高い求人倍率は、この構造の表れでもあるわけです。

もう1つの大きな違い——訪問は「無資格では就けない」

見落とされがちですが、実務上いちばん効いてくる違いがこれです。訪問介護は、原則として介護職員初任者研修などの資格がないと従事できません。利用者宅で一人で身体介護を行う仕事のため、無資格からいきなりは就けない仕組みになっています。一方、施設はチームで動くため、無資格・未経験から働き始められる職場が多い。「まず介護の世界に入ってみたい」人にとって、この入口の差は決定的です。

だから順路としては、無資格・未経験ならまず施設で経験を積み初任者研修を取ってから訪問へ、という流れが現実的なことが多いです。訪問の「採用されやすさ」に引かれても、資格要件で入口がふさがっているケースがある、と知っておくと選択を誤りません。

執筆者ノエル
💡 ノエルの着眼点|訪問を選ぶなら「独り立ちまで何回同行してくれるか」を聞く
訪問は一人で利用者宅に入る仕事。相談相手がその場にいない、が施設との最大の差です。

訪問介護は求人が豊富で門戸が広い。でも、いざ現場に出ると基本は一人で利用者宅に入るので、施設のように隣に先輩がいて即座に聞ける環境ではありません。ここで効いてくるのが、独り立ちまでの同行研修の手厚さ。これは事業所によって本当に差が大きい。面接では「独り立ちまで何回くらい同行してもらえますか」「困ったとき、日中すぐ連絡が取れる体制ですか」を具体的に聞いてください。採用側の目線でいうと、人手が足りない訪問事業所ほど“早く一人にしたい”誘惑があります。それでも同行や連絡体制を丁寧に説明できる事業所は、育てる前提で採っている。倍率の高さに甘えて雑に人を回す事業所とは、そこで見分けがつきます。

ここは中立に。ここで挙げた倍率や年齢構成は全国の平均で、地域や事業所による差が大きい数字です。訪問=高齢化といっても、若手が活躍する事業所はありますし、施設にも幅があります。倍率などの数値は調査年で動きます。施設か訪問かは、求人倍率の高さで選ぶより、一人で動きたいかチームがいいか/身体介護中心か生活援助も含むか/移動を負担と感じないかといった、自分の働き方の好みで考えるほうが、続けやすさに直結します。

最後に

施設と訪問は、同じ介護でも別の仕事です。訪問は求人倍率14.14倍(令和5年度)が示すとおり採用されやすい一方、原則として資格が要り、一人で動き、働き手の年齢層も高め。施設は無資格から入りやすく、チームで学べる。「入りやすさ(倍率)」と「働きやすさ・続けやすさ」は別物として切り分け、自分がどちらの働き方を望むかで選んでください。就業形態や雇用の安定という観点で迷うなら、派遣・正社員・パートといった働き方の違いもあわせて見ておくと、判断がそろいます。

参考データ(出典)
・厚生労働省「職業安定業務統計」(社会保障審議会 介護給付費分科会 提出資料・2024年9月公表)——訪問介護に従事するホームヘルパーの有効求人倍率:令和5年度14.14倍(令和4年度15.53倍)。
・令和5年度 介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター)の結果を厚生労働省社会・援護局が集計/社会保障審議会 福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料(2025年5月9日)——就業形態(無期雇用/有期雇用):介護職員(施設等)69.2%/23.7%、訪問介護員62.0%/30.3%。年齢構成(60歳以上の合算):介護職員(施設等)約16.6%、訪問介護員約25.7%。平均勤続年数:介護職員(施設等)7.9年、訪問介護員7.5年。
※有効求人倍率は「求職者1人あたりの求人数」で、高いほど採用されやすい状態を指します。数値は調査時点により変動し、地域・事業所による差があります。訪問介護の資格要件など制度の詳細は各公式資料をご確認ください。