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働き方

介護ロボットで現場の負担は減ったのか——導入した事業所の「約半数」が答えたこと

「介護ロボットが入れば、現場はもっと楽になる」——求人票や施設のパンフレットで、そんな期待を持たせる言葉をよく見かけます。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、機器の導入を職場選びの決め手にしていいのか迷う人に、たびたび相談を受けます。看護師の母から現場のリアルを聞いて育った身として、期待をあおるのも、頭から否定するのも避けたい。ここでは公的な調査の数字ひとつを起点に、導入の効果を等身大で見積もります。

先に結論介護ロボットやICT機器で業務負担が「軽くなった」と答えた事業所は、昼間で49.4%、夜間で44.6%。おおむね2つに1つです。効果は確かにある。ただし「入れれば自動で楽になる」ではなく、使いこなせているかどうかで結果が分かれる——数字はそう読むのが正確です。

「ロボットが入っている=現場が楽」ではない

まず、いちばん多い誤解をほどきます。介護ロボットという言葉は、人型の機械が入居者を抱え上げるような画を連想させがちです。実際に現場で「日常的に使っている」ものの中心は、もっと地味な道具です。ケア記録やケアプランを入力・保存する介護ソフト、そして夜間の見守りを支えるベッドセンサー。派手さはないけれど、記録の手間や巡回の負担にじわりと効く類のものです。

ここを取り違えると、「うちの施設はロボットを導入しています」という一文を、実態以上に大きく受け取ってしまいます。導入しているかどうかより、何を、どう日常に組み込めているか。同じ「導入済み」でも中身は相当に幅がある、という前提をまず置いておきます。

数字を見る——効果を感じた事業所は「約半数」

公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度「介護労働実態調査」(事業所調査)に、導入の効果を尋ねた項目があります。「効果がある」と「やや効果がある」を合わせた割合は、次のとおりでした。

導入効果の項目「効果がある」+「やや効果がある」
昼間の業務負担の軽減49.4%
夜間の業務負担の軽減44.6%

※介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査)」問15③より。「効果がある」「やや効果がある」の合計。

昼間の業務負担軽減に効果を感じた事業所は49.4%
言いかえると、導入した施設の2つに1つは、はっきりした手応えを得ている。裏を返せば、残りの半分は「思ったほどではない」と感じている、ということでもあります。
出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査)」問15③

この数字、あなたは高いと見るでしょうか。わたしは「約半数」という数字でいちばん注目すべきは、効果が出た側ではなく、出なかった側だと思っています。同じ機器を入れても、半分の現場では負担軽減の実感につながっていない。機器そのものより、夜間のセンサーをどう鳴らし分けるか、記録をどの端末で完結させるかといった運用の設計で結果が割れていると読むのが自然です。導入は出発点であって、ゴールではありません。

導入されている機器の内訳を見ると、この「地味さ」がよくわかります。日常的に使われている筆頭は、利用者情報(ケア記録・ケアプラン等)を入力・保存・転記する機能で75.4%。施設の入所型ではベッドセンサーが70.1%にのぼります。負担の実感に直結しやすいのは、こうした記録と夜間見守りまわりだということです。

執筆者ノエル
💡 ノエルの着眼点|見学では「入れているか」より「使えているか」を聞く
機器の有無はパンフレットでわかる。差がつくのは、その先の一言です。

職場を見るとき、わたしが勧めているのは「導入していますか」ではなく「どう使っていますか」と聞くことです。たとえば夜勤。見守りセンサーが入っていても、全部の反応で結局ナースコールのように呼ばれるなら、負担はさほど変わりません。「センサーで、巡回を何分おきから何分おきに減らせましたか」まで具体的に答えが返ってくる現場は、運用まで作り込めている証拠です。記録も同じで、「タブレットで、その場で入力し切れるか」「二重記録が残っていないか」。機器は職場の本気度がにじむ場所で、導入自体より、それを回す工夫が語れるかどうかに、その施設の余力が出ます。効果を感じた約半数に入っている職場かどうかは、この質問でかなり見分けられます。

負担軽減の話で見過ごせないのが夜勤です。センサーの運用は夜勤のきつさに直結します。夜勤そのものの回数や手当、負担の実際については夜勤専従の記事で正直に整理していますので、機器の話とあわせて見てもらえると、夜の現場の像がつかみやすいはずです。

ただし、機器の有無は「働きやすさ」の保証ではない

期待の側に寄りすぎないよう、ここは正直に書いておきます。

ここは中立に。この効果の数字は、全国の事業所が自己申告で答えた平均値です。導入している機器の種類も、運用の習熟度も、施設ごとにばらつきます。そして何より、ロボットやICT機器があること自体は、その職場の働きやすさを保証しません。機器を入れても人員配置に余裕がなければ、浮いた時間が別の業務で埋まるだけ、ということも起こります。数字は「負担軽減の手段として効果が出うる」ことまでを示すもので、「だから楽な職場だ」と直結させるのは行きすぎ。機器は判断材料のひとつとして、他の条件と並べて見るのが安全です。

最後に

介護ロボットやICT機器の効果は、「昼間49.4%・夜間44.6%」——約半数の事業所が手応えを感じる程度には、確かに現実のものです。ただし残り半数の存在が示すのは、機器は入れて終わりではなく、使いこなして初めて効くという当たり前の事実。求人票で「導入済み」の一文を見つけたら、そこで判断を止めず、「どう使っているか」を一段掘る。効果の出ている側の職場を見分ける近道は、そこにあります。

参考データ(出典)
・公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査(事業所調査結果報告書)」(令和7年7月公表)——ICT機器等・介護ロボットの導入効果(問15③:昼間の業務負担の軽減 49.4%/夜間の業務負担の軽減 44.6%、いずれも「効果がある」+「やや効果がある」の合計)、導入状況(問15①②:利用者情報の入力・保存・転記の機能 75.4%/施設系入所型のベッドセンサー 70.1%)
※本文中の数値は上記調査に基づく概況です。導入している機器の種類・運用状況・調査対象により実態は異なります。最新の詳細は各公式資料をご確認ください。