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給料・待遇

介護報酬改定とは?——3年ごとの「見直し」が、介護職の給料と職場にどう効くか

「介護報酬改定」というニュースは目にするけれど、それが自分の給料や働く職場とどうつながるのかは、案外わかりにくい——そんな人に向けて書いています。わたしは介護職の転職サポートの仕事をしていて、求職者から「改定で給料は上がるんですか?」とよく聞かれます。答えは「上がることもあるが、自動ではない」。この一見そっけない答えの中身を、制度の流れと公的な数字でほどいていきます。

先に結論介護報酬とは、介護サービスの公定価格(国が決める料金)です。国は原則3年に1度これを見直します。これが「介護報酬改定」。改定でまず変わるのは事業所に入るお金で、それが人員配置や業務、そして給料へと波及します。とくに介護職の賃金に直結するのが処遇改善加算。だから求職者が改定で見るべきは「改定率が何%か」よりも、働きたい事業所がその加算をきちんと取れているかです。

介護報酬改定とは——誰が、何を、いつ見直すのか

介護報酬は、事業所が介護サービスを提供したときに受け取る料金のことです。値段を事業所が自由に決めるのではなく、国が「このサービスは何単位」と定めている。だから公定価格と呼ばれます。その料金表を国が定期的に見直すのが介護報酬改定です。

決め方も決まっています。厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会・介護給付費分科会で議論を重ね、審議報告としてまとめ、最終的に厚生労働省の告示という形で価格が確定する。介護報酬は介護保険事業計画(3年を1期とする計画)に合わせて、原則3年ごとに見直されます。次の改定がいつかは、この3年サイクルが基本の目安になります。

介護報酬は、国が定める公定価格。介護保険事業計画(3年を1期)に合わせ、原則3年に1度改定されます。直近の本格改定は令和6年度(2024年度)、加えて令和8年度(2026年6月施行)にも見直しが行われました。
出典:厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)/「令和6年度介護報酬改定について」「令和8年度介護報酬改定について」

ここで一つ補足を。「3年ごと」はあくまで原則で、近年はその間の年にも臨時の見直しが入るようになっています。令和6年度の次は本来なら令和9年度(2027年度)ですが、実際には令和8年度(2026年)にも改定が行われた。物価や賃金の動きに合わせて処遇改善を前倒しする、といった対応が続いているためです。「改定=3年に1回きり」と固定して考えないほうが、現実に近い。

「改定されると給料が上がる」は、半分だけ本当

ここがいちばん誤解されやすいところです。改定率がプラスと聞くと、自分の手取りがそのぶん増える気がします。でも、改定率は事業所に入るお金がどれだけ増減するかを示す数字であって、そのまま給料に反映される保証はありません。

令和6年度改定を例に見てみます。

令和6年度介護報酬改定の改定率は+1.59%。このうち介護職員の処遇改善分が+0.98%を占めました。処遇改善に関する加算はこの改定で「介護職員等処遇改善加算」に一本化され(2024年6月施行)、令和8年度(2026年6月施行)の改定では、その対象が訪問看護・訪問リハビリテーションなどにも広げられました
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(改定率)、同「令和8年度介護報酬改定」関係告示・通知(介護職員等処遇改善加算の対象範囲)

改定率+1.59%のうち、約6割が処遇改善分だった——つまり国は「上がった分を、なるべく現場の賃上げに回してほしい」という設計をしています。ただし、それが実際に給料になるかは事業所が処遇改善加算を取得し、要件どおりに配分するかにかかっています。加算には賃金改善やキャリアパス整備などの要件があり、取れる事業所と取れない事業所がある。だから同じ改定でも、給料の上がり方は職場によって差が出ます。加算そのものの仕組みは処遇改善加算とは何かの記事で、手当としての受け取り方は処遇改善手当で給料はいくら上がるかの記事で詳しく整理しています。

改定は、どんな順番で現場に届くのか

改定が「決まってから自分の職場に効くまで」には、いくつか段階があります。流れを知っておくと、ニュースの意味が読み取りやすくなります。

  1. 分科会で議論する介護給付費分科会で、基本報酬や加算の見直し案を審議する。ここで方向性が固まる。
  2. 審議報告・改定率の決定審議報告がまとまり、予算編成の中で全体の改定率(プラスかマイナスか)が決まる。
  3. 告示・通知が出る厚生労働省が具体的な単位数や加算の要件を告示・通知として示す。事業所はこれを見て準備する。
  4. 施行——現場のお金が変わる施行日から新しい報酬が適用される。令和6年度改定は原則2024年4月施行、処遇改善加算の一本化は同年6月施行だった。

求職者の立場でこの流れを見ると、意味があるのは3段階目以降です。加算の要件が変わると、事業所は「取り続けられるか」を判断し直す。体制を整えて上位の加算を取る事業所もあれば、要件を満たせず加算が下がる事業所もある。その差が、施行後の求人票に賃金差として表れてきます。

執筆者ノエル
💡 ノエルの着眼点|改定は「事業所を選別する」——求人では加算の取得状況を見る
改定率のニュースより、目の前の求人がどの加算を取っているかのほうが、給料には直結します。

改定のたびに、加算の要件は少しずつ厳しくなります。賃金改善の実績、キャリアパス、職場環境の整備——こうした条件を満たせる事業所は上位の加算を取り、満たせない事業所は取り逃す。改定は、体制の整った事業所とそうでない事業所を静かに選別していく制度でもあります。だからわたしが求人を勧めるときに見るのは、改定率そのものより「その事業所が介護職員等処遇改善加算の何区分を取っているか」。求人票や面接で加算の取得状況を確認できれば、賃上げを現場に回せる体力があるかがだいたい読めます。上位区分を安定して取れている事業所は、国の設計どおり改定の恩恵を給料に通している、と考えていい。逆に「加算のことは分からない」という求人は、そこを一歩踏み込んで聞いてみる価値があります。

ただし、改定はプラスの話ばかりではない

改定率がプラスと聞くと明るい話に思えますが、ここは正直に線を引いておきます。

ここは正直に。改定率が全体でプラスでも、すべてのサービスや加算が一律に増えるわけではありません。あるサービスの基本報酬が引き下げられたり、加算の要件が厳しくなって実質的に取りにくくなったりすることもある。全体の数字と、自分が働く現場の実感が一致しないのはこのためです。また、報酬が上がっても物価や人件費の上昇に追いつかず、事業所の経営が楽になるとは限りません。改定を「必ず自分にプラス」と受け取るのではなく、働きたい事業所が改定にどう対応しているかを一つずつ確かめる——その姿勢のほうが、結果として損をしません。

最後に

介護報酬改定とは、国が原則3年ごとに介護の公定価格を見直すことです。まず変わるのは事業所に入るお金で、それが人員配置や業務、そして給料へと届いていく。とくに介護職の賃金に直結するのが処遇改善加算で、令和6年度改定では改定率+1.59%のうち+0.98%が処遇改善分にあてられ、令和8年度の改定でもその拡充が続きました。求職者にとって大事なのは、改定率の大きさを追うことより、働きたい事業所が加算をきちんと取れているかを確かめること。制度の追い風を給料に変えられるかは、最後は事業所しだいです。

参考データ(出典)
・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」——改定率+1.59%(うち介護職員の処遇改善分+0.98%)、介護職員等処遇改善加算への一本化(令和6年6月施行)、施行時期
・厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」関係告示・通知(令和8年6月施行)——介護職員等処遇改善加算の対象範囲の拡大(訪問看護・訪問リハビリテーション等)
・厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会)資料——介護報酬改定の検討・審議の枠組み
※本文中の内容は上記公的資料に基づく概況です。改定率・施行時期・加算の要件は制度改定や自治体の運用により変わることがあります。最新の詳細は各公式資料をご確認ください。